劣化ウラン弾の話 その7

先天性障害の続きです。まずはPregnancy Outcome Among U.S. Gulf War Veterans: A Population-Based Survey of 30000 Veterans. というタイトルで、Annuls of Epidemiology誌の2001年発行11号504-511ページに載った論文です。著者はワシントンのEnvioronmental Epidemiology Service, Department of Veterans Affairsに所属するHan Kang氏ら。

まずはIntroductionから。

「1990年8月、湾岸危機を受けてアメリカはペルシャ湾に軍を派遣した。デザート・シールド作戦開始からデザート・ストーム作戦集結まで、69万7千人の米軍兵士が湾岸地域で作戦に従事した。戦闘での死傷者は200人を下回り、戦闘自体は2ヶ月未満で終結したが、兵士は自然および人工の有害物質にさらされた。」
「湾岸戦争参加兵に関する多数の逸話的な報告で、自然流産・先天性異常などの出生に関する好ましくない影響が述べられている。しかし、以下に述べる2つの研究では、そのような影響はないとされている。ひとつは、1993年9月に湾岸戦争参加兵・非参加兵の子供75000人を調査したもので、先天性異常に関し両者に差はなかった。その研究では、調査時点で両親ともに退役していた場合は調べられていない。その上、死産や人工流産のデータは含まれていない。もうひとつの研究では、子供54人について調べており、先天性異常や小児期の異常の出現頻度は一般人と変わらなかったとされる。しかし、調査数が少ないので、統計的に有意差が出なかったのかもしれない。これらの結果とは逆に、イギリスで湾岸戦争に参加した女性兵士を調査した研究では、非参加兵士よりも流産が多かった。バーレーンの病院からの報告によると、湾岸戦争前後で15628人を調査した結果、自然流産の割合が戦前5年間では11.3%だったのが戦後5年間では15.5%に上昇していたという。」
「1996年、Department of Veterans Affairsが湾岸戦争参加兵と非参加兵の間で健康状態や子供の状態などを比較するプログラムを開始した。我々は、湾岸戦争参加兵と非参加兵の間で、自然流産、死産、早産、先天性異常、乳児死亡率に差がないかどうかを調査した。」

この論文を執筆した時点では、流産が増加するというデータはありますが、先天性異常が増えるというデータは無かったようです。にしても、「逸話的な報告」(anecdotal report)という表現がすごい。

では、方法に移ります。

「湾岸戦争参加兵15000人、非参加兵15000人を抽出した。本研究で”兵士”というのは、湾岸戦争時に任務に就いていたものを指し、調査時点で退役していてもカウントに入れた。DMDC(Defense Manpower Data Center)には、湾岸戦争時に湾岸地域に派遣されていた693826人の兵士の軍事的・統計的情報が収められている。また、湾岸戦争時に湾岸地域にいなかった兵士のうち約半分に当たる800680人のデータもある。調査対象の兵士には16ページにわたる質問書に答えてもらい、さらに電話による質問も行った。」
「湾岸戦争従軍後、最初の妊娠(男性兵士の場合は彼の妻、女性兵士の場合は本人)について調査を行った。デザート・ストーム作戦後、大部分の兵士は1991年3月から5月までに帰国しており、最後の兵士が帰国したのは1991年6月13日である。本研究では、1991年7月1日以降を対象とした。多産児に関しては、分析から除外した。」
「自然流産、死産、早産、先天性障害、幼児死亡について解析を行った。自然流産は妊娠20週までの死亡、死産はそれ以降の死亡と定義した。早産は妊娠37週以内での出生と定義した。先天性障害に関しては、質問書の回答を小児科医に見てもらい、本当に先天性なのかどうかを判断し、グループ1-7まで分類した。障害の程度も判断してもらい、外科手術や長期の投薬を必要とする中程度から重症にあたるものをカウントした。」
「95%信頼区間から外れるものを有意差ありとして統計的に解析した。」

調査はアンケートおよび電話での回答で、カルテなどでの確認はしていないようです。また、先天性障害に関しても、子供を実際に診察したのではなく、回答の内容から推定しているようです。

それでは結果を見てみましょう。

「30000人中、回答があったのは20917人で、うち湾岸戦争参加兵が11441人、非参加兵が9476人であった。また、アンケートのみの人は15817人、電話アンケートも行ったのは5100人だった。回答がなかったのは、若い兵士、結婚していない兵士、白人でない兵士などであった。電話によるコンタクトが取れた兵士は、90%以上がアンケートに応じてくれた。参加兵と非参加兵では、性別、年齢、人種、軍の階級、所属などに差はなかった。調査対象期間中に妊娠したのは20917人中6043人(28.9%)で、うち参加兵が3397人(29.7%)、非参加兵が2646人(27.9%)。」
「両者で比較したところ、流産と死産は男性の湾岸戦争参加兵で男性非参加兵に比べて上昇していた(流産が1.62倍、死産が1.65倍)。ただし、有意差が見られたのは流産のみである。女性では流産と死産で参加兵の方が上昇していた(流産が1.35倍、死産が1.26倍)が、どちらも有意差はなかった。」
「出生児に関しても調査した。新生児死亡や早産は差がなかった。男性では、先天性障害が参加兵で非参加兵の1.94倍と有意に高く、女性でも参加兵が2.97倍と有意に高かった。中程度から高度の障害に限ると、男性で1.78倍、女性で2.8倍とやはり参加兵で有意に高かった。」
「先天性障害の種類別に分けると、Isolated anomaly(同一器官における1つもしくは複数の異常)が参加兵で4.1%(出生2707人中111人)と非参加兵の1.77%(出生2266人中40人)に比べて多く、染色体異常も参加兵が0.26%(2707人中7人)と非参加兵の0%(2266人中0人)に比べて多かった。2分脊椎と思われる症例が参加兵で4例、非参加兵で1例みられた。染色体異常、多発性先天異常、Isolated anomalyを男女合わせて比較すると、参加兵が非参加兵の2.11倍多く、有意差があった。」

湾岸戦争に参加した男性が、帰国後に子供を作った場合、自然流産と先天性障害が有意に増加すること、女性の場合は先天性障害が有意に増加することが示されています。本文中には記述が無く、表にしか出ていませんが、1歳未満の新生児死亡に関しては、男性参加兵が男性非参加兵の0.76倍、女性参加兵が女性非参加兵の0.8倍と、かえって少ない数字が出ています。ただしどちらも有意差はありません。多発性先天異常は参加兵で0.26%(出生2707人中7人)、非参加兵で0.49%(2266人中11人)となっていますが、有意差に関しては記述がありませんでした。

最後に、考察です。

「一般人口での先天異常発症率は2-3%で、今回の研究で得られた湾岸戦争非参加兵の先天異常率は2.65%であり、この範囲内におさまっている。また、中等症から重症に限ると非参加兵では2%であり、これも一般人口(1.9%)とほぼ同じである。」
「男性参加兵に関して。湾岸戦争後に生まれたものの、妊娠時期が湾岸戦争前と推定できる子供が125人いたが、このなかでアンケートに先天異常を記入したのは2人だけだった。その125人に関しては、先天異常を拾いきれていない可能性がある。明らかに湾岸戦争後に妊娠したと推定される場合、アンケートで先天異常を記入したのは全体の9%にのぼったが、実際に異常を持っていると推定されるのはその6割程度であった。これは、湾岸戦争に派遣されたことで、生殖系に異常をきたすのではないかという不安から過剰に報告をしている可能性を示唆している。」
「女性参加兵に関して。妊娠時期が湾岸戦争派遣時期とほぼ重なる例が32人あった。このなかでアンケートに先天異常を記入したのは9.4%で、湾岸戦争後に妊娠したと推定される場合の8.7%と有意差はなかった。こちらも実際に異常があると推定されるのはその6割程度であった。」
「男性参加兵の配偶者に流産が多いという結果が出た。しかし、一般の流産率は10-15%なので、非参加兵の流産率7.7%というのはそれよりも低い値である。また、参加兵の流産率は11.9%なので、一般流産率の範囲内に収まっている。よって、参加兵の流産率が増加したというよりも、非参加兵の流産率が低くなった(というのも考えにくいので何か別のアーチファクトが入ったのかもしれない)というのが正しい。おそらくは男親にあまり知識がなかったり、妊娠早期の流産を忘れてしまったりしているのだろう。これを正確に反映させると、参加兵も非参加兵も流産率が上乗せされるので、多分参加兵の流産率が増加しているという結論になると思われる。女性の参加兵は、流産および早産の報告数が男性よりも有意に高くなっており、妊娠早期の流産や妊娠週数の記憶が男性よりもしっかりしていると考える。」
「本研究では、因果関係の異なる特徴的な先天異常の評価ができない。兵士が暴露したとみられる物質の情報に乏しく、また暴露したとみられる物質の催奇形性がすべて判明しているわけではないので、どの物質が先天異常に影響を及ぼしたのかの特定は困難である。先天性異常において、遺伝因子や環境因子が関与する割合は20-25%と考えられている。湾岸戦争参加兵は、生殖毒性を持つとされる多くの化学物質、生物、物理作用にさらされたことは確かである。」
「本研究は、調査母数が多いのが強みである。また、解析対象を兵士1人あたり子供1人に絞っているので、バイアスがかかりにくいのも良い点と考えられる。」
「まとめ。湾岸戦争参加兵は非参加兵に比べて男女とも子供に先天性障害が出現する割合が増加し、また参加兵が男親である場合には流産の割合が増加した。」

ということで、原因についてははっきりと特定できないということです。劣化ウランも候補のひとつには入るでしょうが、この論文は原因を突き詰めた論文ではないので、何とも言えません。

次は、イギリス兵の話。タイトルはMiscarriage, stillbirth and congenital malformation in the offspring of UK veterans of the first Gulf warで、International Journal of Epidemiology誌の2004年発行通巻33巻、74ページから86ページに載った論文です。著者は、Department of Epidemiology and Population Health, London School of Hygiene and Tropical Medicineに所属するPat Doyle氏ら。

まずIntroductionです。

「1990年後半から1991年前半にかけ、53000人以上のイギリス兵が湾岸戦争に従軍した。その後、従軍兵の子供に先天性障害が増加しているという報道がなされた。アメリカのGeneral Accounting Officeは、1994年に、生殖毒性を持つ可能性のある物質21種類が湾岸戦争において存在していたと報告した。それに加え、従軍兵は炭疽菌に対するものなど多種のワクチンの接種を受け、ピリドスチグミンの内服も行っていた。」
「従軍した兵士自体の健康調査は進んでいるが、生殖関連の調査に関しては報告数が少ない。最初に出されたのはミシシッピー州から湾岸地域に派遣された兵士の子供に関する調査で、先天性障害が多かったり、身体・精神的発育が悪かったりということは無かった。ただし調査対象が300人未満なので、信頼性は低い。他に、80000人以上の兵士の子供に関して調査した研究があり、これに於いても先天性障害が多いと言うことはなかった。ただし、こちらは死産についての比較が無く、また軍関係の病院以外で生まれた子供のデータがないという欠点がある。」
「軍の病院を退院した人のデータを調べたところ、湾岸戦争参加兵の間でゴルドナール症候群(顔面の形成異常を特徴とする)患者が増加しているという報道がなされている。たしかに湾岸戦争参加兵の子供方が非参加兵の子供よりも症例数が多いのだが、トータルで7例しかいないうえに有意差がついていない。いままでアメリカで行われてきた調査の欠点は、軍以外の病院で生まれた子供がカウントに入っていないことや、一般人との比較のデータがないことである。ハワイ州で、先天性障害を持つ48人の子供を調査した研究では、湾岸戦争参加兵の子供と非参加兵の子供で特に差はなく、また湾岸地域派遣前に妊娠した子供と帰国後に妊娠した子供でも特に差はなかった。しかし6つの州(アーカンソー、アリゾナ、カリフォルニア、ジョージア、アイオワ、ハワイ)を合わせてみると、湾岸戦争非参加兵の子供に比べ、湾岸戦争に参加した男性兵士が帰国後に作った子供に先天性心疾患が多く、湾岸戦争に参加した女性兵士が帰国後に作った子供に尿道下裂が多かった。その研究では湾岸戦争に参加した男性兵士が派遣前に作った子供にくらべ、派遣後に作った子供では大動脈弁狭窄と腎低形成・無形成が多かったという結果も出た。しかし、その論文の著者らも指摘していることだが、その研究は多くの分析を伴っており、偶然そうなっただけという可能性もある。」
「計30000人の湾岸戦争参加兵・非参加兵を調査した研究では、流産と先天異常の率が前者で上昇していた(注:上で紹介した論文です)。その著者らは湾岸戦争の従軍と先天異常の間に有意な相関関係があると結論づけているが、医師の診察でなく兵士の自己申告に基づく調査であり、申告バイアスがかかっている可能性がある。」
「アメリカ以外ではいままでに3つの論文が報告されている。ひとつは6500人以上のカナダ兵士に対する匿名の健康調査に基づくもので、湾岸戦争参加兵の子供の方が非参加兵の子供よりも先天性障害の率が高かった。しかし、参加兵の方が出生率や軽度の先天異常の報告数が多く、申告バイアスがかかっている可能性が示唆された。自然流産も参加兵の方が多かったが、こちらは参加兵が派遣前に妊娠したものと帰国後に妊娠したものを分けていないという欠点がある。2つめは、湾岸戦争に参加したオランダ男性兵661人と非参加兵215人にインタビューしたものである。こちらは先天性異常に関し、とくに差はなかった。3つめは、湾岸戦争に参加したオーストラリア兵1448人と参加しなかった1555人を比較したもので、こちらも生殖異常に関して有意差はみられなかった。」
「今回我々は、イギリスの湾岸戦争派遣兵に関して調査を行った。」

ここでいう申告バイアスというのは、湾岸戦争に派遣された兵士は、そこで何か悪い物質に暴露しているのではないかと不安に思うため、非参加兵よりも子供の障害についてたくさん回答してしまう(たとえ障害といえないような小さなことでも)ので、先天性障害が多いように見えてしまうということです。自己申告・アンケート調査の限界とも言えます。

次は、方法です。

「湾岸戦争参加兵は、1990年8月から1991年6月の間に湾岸地域に派遣されたイギリス兵を指す。非参加兵は、1991年1月にイギリス軍に従軍していたが、湾岸地域には派遣されなかった兵士を指す。両者は職種、年齢、性別、階級などを一致させた。まず参加兵52811人、非参加兵52924人を抽出した。彼らに郵便でアンケートを送り、回答してもらった。送付したのは1998年8月から2001年。質問内容は生存して生まれた子供の名前、性別、生年月日と生まれた場所、出生週数、出生時体重、先天性異常、治療の有無や内容、もし無くなったなら死亡した日。また、流産、死産、子宮外妊娠、胞状奇胎、人工流産の有無、死産などの場合には妊娠が中断した週数、分かればそれら胎児の性別や先天異常の有無も質問した。妊娠週数が不明の場合、生きて生まれたなら40週、流産なら10週、死産なら32週と仮定した。両親の許可が得られれば、アンケートの結果が正しいかどうかをかかりつけの開業医などに確認した。」
「胎児死亡に解析は、妊娠12週未満(早期流産)、12-23週(後期流産)、24週以降(死産)に分けて行った。子宮外妊娠、胞状奇胎は胎児死亡に含めなかった。」
「先天性障害の解析は、生きて生まれた子供と、16週以降の流産・死産児、医学的理由での人工流産児について行った。2つ以上の先天性障害を持つ場合、カテゴリーが異なる場合はそれぞれ別にカウントし、同じ場合にはひとつにカウントした。」
「信頼区間95%から外れるものを有意差ありとした。」

では結果です。

「アンケートに答えたのは男性が42818人、女性が1269人で、アンケートを送った湾岸戦争参加兵(男)のうち53%、非参加兵(男)の42%、参加兵(女)の72%、非参加兵(女)の60%が回答した。男性で回答率が低かったため、なぜ答えてくれなかったのか確認したところ、アンケートが来たことや送り返すことを忘れていたり、送ったと思いこんでいたり、答える気がなかったり、と言った理由が90%で、結果に影響を与えるとは考えられなかった。このうち研究対象期間中に妊娠を経験したのは男性27959人(参加兵16442人、非参加兵11517人)、女性861人(参加兵484人、非参加兵377人)だった。」
「死産・流産に関して調査したところ、湾岸戦争参加兵(男)が18%、非参加兵(男)が14%で、参加兵(男)の方が40%ほどリスクが上昇しており、有意差がみられた。時期別に見ると、早期流産が50%のリスク上昇、晩期流産が20%のリスク上昇で有意差が見られたが、死産は10%減で有意差無しであった。女性では参加兵・非参加兵の間で有意差はみられなかった。また、参加兵・非参加兵の男女ともに、死産率はイングランドやウェールズの一般的な死産率と有意差はなかった。」
「先天性障害に関して。湾岸戦争参加兵(男)から生まれた子供には686人から801の異常が見つかり、非参加兵(男)の子供からは342人、411の異常が見つかった。発症率は参加兵(男)が100人中5.2、非参加兵(男)が100人中3.5で、有意差が見られた。女性では参加兵の子供からは19人、23の異常、非参加兵の子供からは9人、9の異常が見つかった。発症率は参加兵が100人中5.3、非参加兵が100人中3.2であったが、症例が少ないため有意差は出なかった。」
「細かく見ると、参加兵(男)の子供では消化器系異常が40%増、生殖器系が80%増、泌尿器系が60%増、筋骨格系が80%増だった。中枢神経系、頭頚部、循環器系、呼吸器系、染色体異常、唇裂、二分脊椎は非参加兵(男)と差はなかった。女性では細分しても差は出なかった。」
「開業医などから障害の状況を確認できた湾岸戦争参加兵(男)の障害児330人と、非参加兵(男)の障害児196人のデータを解析すると、参加兵(男)では泌尿器系の異常が60%多く、筋骨格系が50%多く、どちらも有意差が見られた。その他は有意差が見られなかった。」

最後に考察です。

「アメリカでの研究と異なり、循環器系や染色体の異常は増加が見られなかった。泌尿器系で異常が増加したが、大部分は膀胱尿管逆流症という機能異常であった。また、その他の有意に増加した異常も、カテゴリー上は「その他」に分類される小異常が大部分であった。また、医師の診断が得られたものに限ると、増加した異常は限定される結果となった。」
「湾岸戦争に参加した兵士は、そのことで自分や子供に悪影響が出たのではないかと不安を抱いており、このような調査では非参加兵よりも詳しく異常を述べる可能性がある。医師の診断が得られたものに限ると有意差のある異常が減少したことは、この可能性を示唆する。」
「最近の研究で、マウスの精祖細胞に放射線や化学物質を暴露させると、遺伝子発現が微妙に変化したり、遺伝子の不安定性が出現したりするという報告がある。これらの影響はかなり小さいため、診断が難しい。ただし、湾岸戦争中にどんな物質にどれくらい暴露したかは、今となっては調べる術が非常に限られており、流産や先天性異常の増加の原因を知るのは相当困難である。さらなる研究が求められる。」

冒頭のアメリカの研究と比較すると、流産が増えるのは同じですが、先天性障害の種類に関しては違いが見られます。また、女性では流産・先天性障害ともに有意な上昇が見られていません。
この差は暴露した生殖毒性を持つ物質の違いによるものかも知れませんが、考察にもあるとおり、特定するのは難しいです。候補は劣化ウランだけでなく、クウェートの科学者が主張するような油田火災による煤煙から精神的ストレスに至るまで、数限りなくあります。おそらくそれらのうちのいくつかが複合しているのでしょうが、詳細は不明。

ということで、湾岸戦争と流産・死産や先天性障害の増加の関連を示す論文を読みましたが、劣化ウランが原因だとするものはありませんでした。
次回はユーゴ・コソボ戦争に移ります。

           (2005年9月25日)

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